ノーカンと彼女

今日は半休がもらえたので和也と水族館デート。
今回はちょっと遠征して初めての水族館に来ている。

 

和也との水族館デート自体はレンカノ時代にさんざんやったけど、正式に付き合ってからするとやっぱり少し違う感じがする。

 

 


沿岸コーナーを歩いていると...

 

「あれってもしかして...」

 

「? どうしたの?」

 

突然彼がある水槽に食いつく。

 

「うお~、"アオギス"じゃん!」

 

「アオギス?」

 

「そう!」
「名前の通りキスの仲間なんだけどさ、」

 

「うんうん」

 

「昔は東京湾より南ぐらいからは全国に分布していたみたいなんだけど、」
「高度経済成長期での水質汚染とか埋め立てでどんどんいなくなっちゃって」
「今は国内のほんとに一部にしかいないんだよ」
「でも、正式に絶滅危惧種に制定されているわけじゃないんだ」

 

「へえ~」
「...ふふっ」

 

「な、なんだよ」

 

「いいや、別にっ」

 


やっぱりこういう和也を見るのは好き。

 

「そ、そうか」

 

普段はちょっとおどおどしてたり情けないようなところもあるけど、

 

お魚の話をしだすと人が変わったように目を輝かせながら語りだす。

 


「いや~。でもやっぱり数減って今はほとんど見ることできないからさ、」

 

そんな彼を見れるのがうれしい。

 

 


―彼の隣に一歩近づく。


「こうやって、この目で間近に見られるのはうれしいなあ」


―ちょっと身長差があるので少し背伸びをする。

 


"キス"、かぁ

 


「ねえ和也、ちょっとこっち向いて」

 

「え、なn...、!?!?!?!?!?」


―私の呼びかけに応えて振り向いた彼の唇めがけて私の唇を重ねた。

 


「っ......」

 

「......」
「せっかく正真正銘の恋人になったんだから、こういう事もいいでしょ?」

 

 

 

 


―私は和也と"kiss"をした。

 

 

......

 


......

 


......

 

 

「...な、なあ」
「...もしかしてちづるのファーストキス、だったりする、のか...?」

 

「なによ、さっきのあれの話?」

 

「う、うん」

 

「...どうせ和也のファーストキスは麻美さんなんでしょ?」

 

「うっ...」

 

「何なら瑠夏ちゃんとも何度もしてたって言うじゃない」

 

「あ、あれは強引に...」

 

「ふーん...」

 

「...」

 

「...そうねえ」
「私は一度もなかっ...。ああ、そういえば以前それっぽいこと1回あったわね」

 

「そ、そうか...」
「(そりゃちづるかわいいしなあ...。高校のときとかに一度くらいあってもおかしくないよなあ...)」

 

「まあでも、あれはどっかの誰かさんが私を助けてくれようとして溺れてたからやった救命行為だし?もしその人が嫌だって言うならノーカンにしてもいいけど?」

 

「!!!」
「そ...それって...」

 

「だとしても結局どっちも同じ相手だし、ノーカンにしてもしなくてもあんまり変わらないと思うけどねっ」

 

「ちづる...」

 

「早く次いこ?私の初めての人っ!」

 

「...う、うん!」

 

 

 

―2021.08.22投稿

 

コメント

なんか妄想投稿する流れになってたので書いた作品。

 

そういえばファーストキスのエピソード書いてないなあと思ってちょっと考えてみたらいろいろ湧いた。

時系列的には「最後のカレシと最初の彼氏」と「旅行と彼女と○○の日」の間ぐらい。

 

kissと魚のキス、という割とごまかしの鉄板ネタだけど和也と絡めるとすごくしっくりくる。

 

キスのシーンは映像とか漫画で考えるとめっちゃ印象的なシーンなんだけどこれを文字だけで表現するのがすごく難しいなあ、と。