電車内と彼女(第4回妄想大会投稿作品その2)

 


私は今、飛鳥山北高校に向かうために電車に揺られている。
要するに通学中。

吊革につかまりながら何となく顔を上げると、予備校の広告が目に入った。


うーん...、やっぱりアクターズスクールとか通うのも考えた方がいいかなあ。
高校の部活だけじゃなく、それ以外もやった方が絶対いいわよね

うん。今度おじいちゃんとおばあちゃんに相談してみよう。


なんてことを考えていると、ふと同じ高校生ぐらいの男子二人の会話が耳に入ってきた。


「は!?また告白した~!?」

「お、おう...」

「お前この前その子に振られたばっかじゃなかったか...?」

「うっ...」

「...」
「一応聞くけど、結果は?」

「...振られた」

「そりゃあな...」

「...でも、俺はあきらめない!」
「来週また告白する!」

「は!?!?」

「某先生も言ってたじゃねーか!諦めたらそこで試合終了だって!」

「......」
「...和ちん。引き際も大事だと思うぞ...」

 

話を聞くに、そこそこ背の高い方の男子が告白して振られたようだ。
そして、背はそこまで高くはないがかなりガタイのいい男子が呆れている。

 

告白ねえ...


確かに私もたまに呼び出されたり、ラブレター貰ったりはする。
でも、相手に悪いとは思いつつもお断りさせてもらっている。


別に恋愛に興味がないわけじゃないけど、なんとなくまだそういうつもりがないというか。
相手の事あまり知らないのに、軽々しく付き合ったりしちゃっていいのか、とか。
そういう感じであまり気は進まない。

それに、今は演技の方頑張りたいし。

 

 

...でも、いつか私もそんな日が来たりするのかな。

相手の人はどんな人なんだろう...

 


『次は○○、次は○○。お出口は~』

あ、次乗り換えだ。

 

正直あんまりイメージは湧かない。
私にはまだ早いのかな。

 

「とにかく、俺はあきらめないぞ!」

「...和ちんのそういうとこ、たまにすげーって思うよ」

「ん?なんか言ったか?」

「いーや、別に」


駅についてドアが開く。
他人の流れに乗りながら私も外に出た。

 

...なんとなく、真っすぐな人がいいな、とふと思った。

 

――――そんな、二人が出会う3年ぐらい前のある日の出来事。

 

おしまい


―2021.11.06(第4回妄想大会)投稿



コメント
第4回妄想大会の2作目

高校の時に実はちょっとすれ違ってた系の話は前ちょっと考えたけど、和ばあちゃん辺りを絡めようとしてうまく形にならなかったのであきらめてた。

代わりに木部と和也にしたらいい感じに構想が浮かんでこんな作品になった

主人公とヒロインが、お互いを全く知らない過去にちょっとだけ交わりあってて、そこで何気なく相手が気になった。その相手がのちの...
っていうシチュエーションがすごく好きなので、作品として書けて満足してる