マンションと彼女(第3回妄想大会投稿作品その3)
大学4年後期の期末試験を終え、私たちはその帰路に就いていた。
「次大学行くのはもう卒業式なのよね」
「いろいろあった4年間だったなあ」
「そうね...」
「あなたは卒業したら実家のコンビニ継ぐの?」
「そうだな」
「やっぱりそれが俺の使命だと思ってるし」
「そう」
「聞くまでもないと思うけど、ちづるはやっぱり女優一本?」
「そりゃもちろん」
「やっと主演番組もらえたんだもの、まだまだこれから頑張っていかないと」
この1月期のドラマで初めて主演を任せてもらっている。
そのおかげか、メディアへの露出が増えてきてる。
ときどき"最近注目の若手女優"等の特集で名前も挙げてもらったりしてて嬉しい限り。
「俺も引き続き全力で応援してるよ」
「...ありがと」
「......」
「...?」
「何か心配事?」
「いや...、いつまでもあのアパートにいるわけにはいかないなあって」
「さすがにちょっと狭くなってきちゃったし、それなりにお金も入るようになってきたから」
「実家に住むってのもあるけど、一人で住むにはちょっと広すぎるし。」
「それに...」
「それに?」
「...和也と離れるのは嫌...」
「ちづる...」
「...」
「...」
「...」
「...じゃあさ」
「俺と一緒に住まないか?」
「...え?」
「実家継ぐといっても、最初は店員扱いだろうし」
「俺もあのアパートのままってわけにはいかないと思ってたけど、実家に戻らなきゃいけないわけでもないなって」
「じゃあいっそ、近くにマンションでも借りて二人で住んだ方がいいかなって思って」
「俺たちの今後のためにも...」
「和也...」
「どうかな?」
「もちろんうれしい。ありがと...」
「で、でもまだばあちゃん達にも言ってないし、そもそも許可貰えなかったら無理な話だし」
「ふふっ、きっと大丈夫よ。おばあさん達、私たちのこと凄く応援してくれてるもの」
「ちょっと過剰な気もするけどな」
「あはは」
「じゃあ早く候補決めないとね」
「え?先に話してからでいい気も...」
「何言ってるのよ、先にある程度決めておいた方が説明もしやすいでしょ」
「それもそうか...」
「とりあえずアパート帰るか」
「そうねっ」
ありがとう、和也。大好き。
おしまい
―2021.08.15(第3回妄想大会)投稿
コメント
「将来と彼女」のコメントで、次回はプロポーズですね、という声があったので、次プロポーズするのなら先にこのエピソードを書いておかないと、と前日少し眠れなくなったので書いた作品
同棲するとしたらアパート離れることになるので、その理由としてもタイミングとしても卒業と就職がちょうどいいのでその設定で。
プロポーズの時は社会人になっている、というのをはっきり示しておきたかったのもある。
ちづるがちょっとずつ売れ出している、というのもプロポーズ回につなげるための設定。
同棲だけでなく、結構プロポーズ回に向けて準備を仕込んでる作品